【年長組 劇あそびシリーズ②】「3人でハートつくるのはどう?」——話し合い、役割を分かち合う協同の姿
【この記事のポイント】幅下幼稚園(名古屋市西区)の年長組・劇あそびの取り組み第2回です。子どもたちがチームに分かれ、自分たちで役割や表現方法を話し合って決めていくプロセスをご紹介します。見えない役割を想像するナレーターチームや、一人ひとりの「やりたい」を尊重して4つの表現を生み出したチーム、セリフの分担やポーズを3人で相談して決めるダンスチームなど、主体的に協同する5歳児のありのままの姿をお伝えします。
絵本『せんにんのいし』から湧き上がった「ふしぎ」を囲み、みんなでお話の土台をつくり上げた年長組の子どもたち。 いよいよ、登場人物ごとのチームに分かれての話し合いが本格的にスタートしました。
大人が決めたセリフや立ち位置を教え込むことはしません。 「自分たちはどうしたいか」「友だちの考えとどう合わせるか」を、子どもたち自身が言葉を交わしながらひとつずつ決めていきます。
意見を出し合い、役割を分かち合い、お互いの思いを形にしていく。年長組ならではの豊かな対話と、友だちと協力し合う「今の姿」をご紹介します。
見えない役割も、自分たちで想像する
「ぼのさんチーム」が話し合いを進めるすぐ隣で、「ナレーターチーム」の作戦会議が始まっていました。 ナレーターは、お話を言葉で伝えるだけの役ではありません。場面が暗くなったときに、捨てられた「石を元に戻す」という、物語をつなぐためのとても大切な役割も担っています。
大きな紙に考えを書き出しながら、子どもたちは一つひとつの動きを想像していきます。

「どうやって戻す?」 「ぼのさんに見つからないように…」 「しろいぬのところでかくす?」 「そーっと運ぶ?」
お話が途切れることなく、次の場面へ自然につながっていくように。舞台の“見えないところ”を支える役割について、真剣に考えを巡らせています。こうした話し合いの積み重ねが、子どもたちの想像力や人とつながる力をそっと育んでいます。
一人ひとりの「やってみたい」を重ねる
別の場所では、「いしにすんでいるいきものチーム」が大きな紙を囲んでいました。 ぼのさんが持ってきてくれた素敵なものに対して、どんな“おもてなし”をしたいのかを話し合っています。

「あいすくりーむのおどりは?」 「たいこ!」 「せんにんを守りたい」
思いついた言葉やイメージが、紙の上に次々と書き足されていきます。 話し合いを重ねた結果、このチームは誰かひとつの意見に絞るのではなく、「ダンス」「ぼのさんを鬼から守る」「たいこ」「風船羽子板となわとび」の4つに分かれて表現することに決まりました。 一人ひとりの「やってみたい」という思いを尊重し合い、みんなの考えが少しずつパズルのようにつながっていく、豊かで主体的な時間です。
「ここはわたしが言いたい」——言葉を分け合う作戦会議
おもてなしの中で「ダンス」を選んだ3人の女の子たち。 披露する前の自己紹介で、“見てほしいポイント”をどう伝えるかを先生と一緒に整理していました。
言葉がまとまると、次は「このセリフ、誰が言う?」という相談です。 「ここはわたしが言いたい」 一文の中の“どの言葉を言うか”まで、3人で自然と話し合う姿が見られました。

そこで先生が3色の水性ペンを手渡すと、それぞれが自分の担当する言葉を丸で囲み、その横に自分の名前を書き始めました。みんなで決めたことが、自分の大切な役割としてはっきりしていく瞬間です。 表現するだけでなく、話し合い、役割を分かち合い、お互いを認め合う経験がここにあります。
体を通して気持ちを合わせるラストポーズ
ダンスチームの3人は、自分たちで考えた振り付けのオリジナルダンスを、何度も踊って楽しんでいます。 ある日、最後のポーズをどうするか相談しているときのこと。1人の子が提案しました。
「3人でハートつくるのはどう?」 「私がこうするね」
と1人が手を出すと、他の2人も自然に手を添えていきます。少しずつ角度を変えながら合わせていくと、本当にきれいなハートの形ができあがりました。 「すごい!ハートになったね!」という先生の声に、3人ともにっこり。最後のポーズは、それに決まりました。

誰かのアイデアを、言葉だけでなく体を通して気持ちを合わせながら形にしていく。 劇あそびは、仲間と考え、試し、決めていくプロセスそのものが、子どもたちの心の育ちの時間となっています。
【年長組 劇あそびシリーズ】 幅下幼稚園の年長組が、お話を創り上げ、おゆうぎ会の舞台に立つまでのプロセスを全5回でお届けします。
① 絵本の世界をみんなでひらいていく時間
② 役割の自己決定と協働(本記事)
③ 大道具・衣装・小道具づくり(次回更新)
④ チーム保育で見守る子どもたちの挑戦
⑤ 本番と総括〜みんなで迎えたおゆうぎ会〜
