【年長組 劇あそびシリーズ①】「どうして石はもどってくるの?」——ひとつの「ふしぎ」から始まるお話づくり

【この記事のポイント】幅下幼稚園(名古屋市西区)の年長組による劇あそびの取り組みをご紹介します。絵本『せんにんのいし』を題材に、子どもたちから湧き上がる「どうして?」という疑問をマインドマップで広げ、登場人物やストーリーを友だちと一緒に話し合って決めていくプロセスを大切にしています。自分たちで考え、選び、創り上げる、主体的な年長児のありのままの姿をお伝えします。

「どうして石はもどってくるの?」
「いしがうごいてる」
「じつはにせものだったんじゃない?」

ホワイトボードの前に集まり、友だちの声に耳を傾けながら、次々と自分の考えを言葉にしていく子どもたち。これは、年長組の保育室で見られたお話づくりのひとコマです。

今年の年長組の劇あそびは、絵本『せんにんのいし』の世界から始まりました。子どもたちが絵本を読んで感じた疑問やアイデアを、友だちと「言葉」で共有し、自分たちで物語を創り上げていくプロセスを何よりも大切にしています。

2学期の終わりから3学期にかけて、子どもたちの頭の中でどんなイメージが広がり、どのようにお話が紡がれていったのか。年長組の等身大の姿をご紹介します。


絵本の世界を、みんなでひもとく時間

2学期の終わり。年長組では絵本『せんにんのいし』の読み聞かせの時間をたっぷりと味わいました。 お話を聞く子どもたちは静かですが、その目はとても真剣です。物語の一つひとつを心に留めながら、じっと耳を傾けている様子が伝わってきました。

読み聞かせのあと、クラスのみんなでホワイトボードに向かい、「誰がいた?」
「何が出てきた?」
と問いかけながら、絵本の世界を整理していきます。
子どもたち一人ひとりの気づきや、頭の中に浮かんだイメージを丁寧にすくい上げ、みんなで共有する時間をゆっくりと積み重ねていきました。

答えのない「ふしぎ」を味わう

次の日。今度は、子どもたちがいちばん不思議に思っていることを真ん中に置き、マインドマップのように思いついたことを書き留めていく時間を持ちました。

中心にある問いは、「どうして石はもどってくるの?」。 すると、子どもたちからは想像力豊かなアイデアが次々と溢れ出します。

「せんにんがまほうをかけてる」
「いしがうごいてる」
「じつはにせものだったんじゃない?」

友だちの言葉を聞いて考えがさらに広がり、
「石なのになんでしゃべるの?」
「なんでまほうがつかえるの?」と、
新しい“ふしぎ”も次々に出てきました。 すぐに答えを出さなくてもいい。不思議に思うこと、そして考えを出し合う時間そのものを、子どもたちは心から楽しんでいます。

「どれをやってみたい?」自分で選んで関わる

年が明けて3学期。 子どもたちがこれまでたくさん出し合ったアイデアをもとに、担任の先生たちが簡単なストーリーと登場人物を形にして紹介しました。

「ぼのさん」
「せんにん」
「石をもとにもどす人」
「石にすんでいるいきもの」……。
絵本の世界と、みんなで話し合ってきた言葉が、少しずつひとつのお話としてつながり始めます。

そして、「どの登場人物をやってみたいかな?」と投げかけ、子どもたち自身で自分の役割を選びました。自分から「やってみたい」と選び、関わっていくからこそ、これから始まる劇あそびが「自分たちのもの」へと変わっていきます。

「じゃあこうしてみる?」友だちと創り上げる喜び

役が決まったあとは、登場人物ごとのチームに分かれての話し合いです。

「ぼのさん」チームでは、床や壁に広げた大きな紙に考えを書き足しながら、お話をさらに整理していきました。

石はどこに捨てるのか、
せんにんには何を持っていくのか。

一つひとつの問いに対して、

「それいいね」
「じゃあこうしてみる?」

と、友だちの考えを認め合い、アイデアを重ねていきます。 自分と違う意見にも耳を傾け、折り合いをつけながら、ひとつのものを一緒に創り上げていく。これこそが、年長組の時期に見られる素晴らしい姿です。 次に控えている「ナレーター」チームの話し合いも交えながら、子どもたちのお話づくりは、おゆうぎ会の劇あそびに向けてさらに深まっていきます。


【年長組 劇あそびシリーズ】 幅下幼稚園の年長組が、お話を創り上げ、おゆうぎ会の舞台に立つまでのプロセスを全5回でお届けします。

① 絵本の世界をみんなでひらいていく時間(本記事)
② 役割の自己決定と協働(次回更新)
③ 大道具・衣装・小道具づくり
④ チーム保育で見守る子どもたちの挑戦
⑤ 本番と総括〜みんなで迎えたおゆうぎ会〜