【年少組】台本のない劇遊び。「おいしい!」と「楽しい!」から生まれた『うんとこしょ』の物語
この記事のポイント:
幅下幼稚園(名古屋市西区)の年少組おゆうぎ会は、決まったセリフを覚えるのではなく、日々の遊びの延長線上で構成されています。焼き芋体験から始まった「お芋ごっこ」や、手遊び「小さな庭」からの想像遊びを組み合わせ、子どもたちの「やりたい」という主体性を尊重。当日は観客席をUの字型に配置し、親子で楽しめる温かい空間を作り上げました。
1月23日、年少組の「おゆうぎ会」を開催しました。 初めての大きな行事。幕が開いたときに見られたのは、緊張して固まる姿よりも、いつものようにお友だちと笑い合う子どもたちの姿でした。
今年の年少組の劇遊びには、決まったセリフや厳しい練習はありません。 日々の生活の中で心が動いた瞬間をつなぎ合わせ、子どもたちと保育者が一緒に作り上げた、世界にひとつだけのストーリーです。
12月から1月にかけて、子どもたちがどのようにイメージを広げ、当日の表現へとつなげていったのか。そのプロセス(過程)をご紹介します。
きっかけは「焼き芋」のおいしさ。実体験から遊びへ
劇遊びの原点は、2学期の終わりにさかのぼります。 年長・年中組のお兄さんお姉さんが畑で掘ってきてくれたサツマイモ。これをみんなで「よいしょ」と洗い、ふかし芋にして味わった体験がすべての始まりでした。
「おいしいね!」と五感で秋の恵みを感じた子どもたち。その興奮は、すぐにお部屋での遊びへと変化していきました。 マットを畑に見立てて、今度は自分たちが「お芋」に変身です。 保育者に足を引っ張られても抜けないように、全身に力を入れて踏ん張ります。

「うんとこしょ、どっこいしょ」

お芋を引っ張る掛け声のリズムが心地よく、遊びの中で自然と口ずさむ姿が見られるようになりました。
「やらされる練習」ではなく、実体験から溢れ出る「やりたい動き」だからこそ、子どもたちの表情は生き生きと輝き始めます。
「何が出てくるかな?」想像の種をまく
年明けの1月。遊びはさらに広がります。 子どもたちが大好きな手遊び歌「小さな庭」を楽しんでいるときのこと。
「花じゃなくて、お芋みたいにツルになったら何が出てくるんだろうね…?」と問いかけてみました。
ここからが、イメージの世界を楽しむ年少組(3歳児)らしい時間の始まりです。 「メロン!」「トマト!」という野菜の声に混じって、 「あんぱん!」「けーき!」「さんどいっち!」 と、子どもたちの大好きな食べものが次々に飛び出します。

ある日、お部屋の中に大きな“ツル”が現れました。 「今日は何の種を植えようか?」と話し合い、みんなで力を合わせて引っ張ってみると……出てきたのは大きなバナナ。
「わぁ!」 と目を丸くする子どもたち。 「今日のバナナ、あまくておいしい!」「ちょっとすっぱいかも?」

目の前にないものでも、言葉とイメージを共有して楽しめる。これは、友だちへの関心が深まるこの時期ならではの成長した姿です。

観客席はUの字型。安心できる距離感で
そして迎えたおゆうぎ会当日。 今年度は、子どもたちが「動物になりきる」ことをのびのびと楽しめるよう、舞台の上だけでなく、フロア全体を広く使った構成にしました。 保護者の皆様の座席も「Uの字型」に配置。大好きなお父さん・お母さんが近くで見守ってくれている安心感の中で、子どもたちはいつもの笑顔を見せてくれました。

最後は、会場のお客さまも巻き込んでの「うんとこしょ!どっこいしょ!」。 抜いて、焼いて、食べる焼き芋の味は、格別だったことでしょう。

「楽しい!」「もっとやりたい!」 この気持ちこそが、幼児期の学びの根っこです。 上手に演じることよりも、心を動かして表現することを楽しんだ年少組。この経験は、年中・年長組での協同的な活動へとつながる大切な土台となっていきます。
