「どうしたら、速くなる?」その問いから始まった、子どもたちの運動会
「どうしたら、速くなる?」子どもたちの問いから始まる、主体的な学びの記録
11月の秋晴れの空の下、運動会を開催いたしました。幅下幼稚園では、運動会という行事において、本番の成果だけを目的とするのではなく、そこに至るまでの子どもたちの主体的な取り組みや成長のプロセスを何よりも大切にしています。
今回は、各学年がそれぞれの発達段階に応じて、夢中になって取り組んだ活動の様子をご報告します。

年長組では、クラス対抗リレーに熱心に取り組みました。練習を重ねる中で、子どもたちと一緒に「どうしたら、もっと速く走れるだろう?」と相談します。

チームごとの「作戦会議」では、子どもたちが意見を出し合いました。「内側を走る」「バトンを待つ時に手を伸ばす」など、アイデアを整理するためのマインドマップには、子どもたちが考え抜いた工夫がたくさん記録されています。
勝って喜ぶ日もあれば、負けて悔し涙を流す日もある。その一つひとつの経験を通して、子どもたちは仲間と協力することの楽しさと難しさ、そして目標に向かって努力することの大切さを学びます。私たちは、こうした試行錯誤の過程こそが、子どもたちの協同性や問題解決能力を育む貴重な機会であると考えています。
年中組は、一通の「忍者からの手紙」から始まりました。「かけっこ」が「忍者修行」へと変わった瞬間、子どもたちの目の輝きが変わります。


「忍者になりたい」という憧れの気持ちは、子どもたちの意欲を強く引き出します。腕の振り方や視線など、忍びになりきって真剣に走る姿は、遊びを通して楽しみながら身体能力を高めていく理想的な姿です。また、夢中で走る友だちに対し、自然と「がんばれ!」という応援の声が生まれるなど、他者への関心や思いやりの心も育まれていきました。



さらに、その憧れは「自分たちも忍者の巻物を作りたい」という製作活動へと発展。遊びの中で生まれた「やってみたい」という気持ちが、創造力や表現する喜びへと繋がっていきました。

満3歳児クラスでは、平均台やマット、トンネルなどを保育室や中庭に子どもの様子に応じて設置し、子どもが自分の意志で遊びを選べる環境を整えています。

そっと慎重に平均台を渡る子、勢いよく飛び降りる子など、同じ遊具でも挑戦の仕方は一人ひとり異なります。この「自分にとって“ちょうどいい”挑戦」を繰り返すことが、自己肯定感を育み、自分の体を思い通りに動かす楽しさを知る第一歩となります。



運動会当日も、大好きなお家の方と一緒に、日頃から親しんでいるマットの坂道などを楽しみました。いつも通りの安心できる環境の中で、特別な人と一緒に楽しむ経験。こうした日々の遊びの積み重ねが、子どもたちの「できた!」という大きな自信につながっています。



幅下幼稚園では、運動会を「成果を発表する場」よりも、「成長の過程を共有する場」と捉えています。子どもたちの「楽しかった!」という言葉と笑顔こそが、豊かな心と体を育みます。この秋の「楽しかった」の日々が、子どもたちの今後の成長の糧となることを信じています。

